照相机

9 月27

そもそも はるばる 武漢まで来たのは

中国人の友だちTang君に貸したカメラを

返してもらうためでした。

ネパールで出会ったTang君は

中国から ネパール インド パキスタン 

への長旅の途中で

持ち物は オレンジとTシャツと水色のポロシャツの2着

輪ゴムで縛った いくらかのルピーと

カメラと画材くらい。

純粋に 写真と絵のために旅をしている人でした。

そんな彼が

一緒に行ったポカラで

カメラを壊してしまったのです。

何が起きても

「ノープロブレム」

と言っていた彼が、めずらしく 無言になっているのを見て

私に ゆいいつ できたことは

自分のカメラを手渡すことだけ。

「中国に帰ったら、連絡してね。カメラを取り返しに行くから・・・」

そう約束して、彼はインドへ旅立ち、私は日本へ帰りました。

それが7月の末。

武漢ってどんなところだろう?

と思いつつも、ビザの事やら何やらの実務的な事に追われて

あまり下調べをして行かなかった私。

大草原の小さな家みたいなところの屋根に

オレンジのTシャツと水色のポロシャツが はためいている

それを目指して 半日 歩いたところで

ようやくTang君が手を振っているのが見える・・・

それくらいのイメージを浮かべて

上海から武漢への寝台列車に乗りました。

ところが!

武漢に着いてみると

そこは中国のダイナミックさと

ヨーロピアンの香りを

あわせ持った大都会でした。

「駅に着いたよー」

とTang君に連絡すると

「今、同僚が そっちに迎えに行くから待ってて。

どうしても手を離せない仕事があるから

とりあえず 僕のオフィスまで来てもらっていいかなぁ?」

との事。

仕事?

オフィス??

武漢という街が 私のイメージと遠くかけ離れていたように

Tang君も、地元中国では、全く違う人だったりして?

もしかして、ボロボロのTシャツじゃなくて

カチッとスーツを着ていたりして?

あー、なんだか 変に緊張してきた・・・。

しばらくして現れたTang君の同僚は

小太りの体格に素朴な顔立ち

どうやら走ってきてくださったらしく

額に汗をうかべています。

そして、さっと私のバックパックを背負うと

オフィス街の人並みを掻き分けながら、どんどん 進んでゆきました。

武漢は、ビルも 車道も 歩道も ぜんぶぜんぶ 日本の4倍くらいの大きさ。

並木道の木もなかなかの巨木。

急に、自分が小さくなったみたいな気がしてきます。

かなり大きいと思っていた私のバックパックも

Tang君の同僚の大きな背中の上では小さく見えるなぁ。

そんな事を考えながら 追いかけていたバックパックは

ひょいっと 小さな路地を抜けて アパートの立ち並ぶ通りに出ました。

武漢の街は 見上げると 現代的なビルや西洋建築に圧倒されますが

目線の高さには、中国の庶民的な文化が広がっています

焼き栗や 揚げパンを売っている 屋台が並んでいたり

二胡を奏でている人がいたりと。

バックパックは アパートの1階

福の字をさかさまにしたマークのポスターがはってあるドアの前で立ち止まります。

「ここがオフィス?」

そう思っていると

ノックする前にドアが開いて

携帯電話を片手に持った 見覚えのある顔が現れました。

「Tang君!!」

久々に会ったTang君は

オレンジのTシャツでも

水色のポロシャツでもなく

ピンクの花柄のシャツを着ていました。

「前、デザイン会社で一緒だった仲間と 新しい会社を始めたんだ

それで、いろいろ忙しくて・・・・」

そんな事を 前に会った時よりも ちょっと上達した英語で話しました。

きっと、インドで、かなり英語を鍛えられたのでしょう。

ひとまずTang君が、カチッとした会社員じゃなくて ほっとした私。

私が貸したカメラで写した インドやパキスタンの写真を見せてくれました。

大理石が涼しげなタージマハル

ラクダの背中にまたがって撮ったという タール砂漠の写真

イスラマバードのモスク

どの街でも、笑っている子供の写真がいっぱい・・・。

私のカメラは、なかなか楽しい旅をしたようです。

このカメラのお陰で 花柄シャツのTang君と再会する事ができたんだなぁ。

片手にしっくりと収まる このRicohカメラが、ますます愛おしく思えてきました♪

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