チキンスープと登山(4)餡かけ

6 月26

日本人のわたしには、中国の親子関係というのが、

未だに完璧には理解しがたいものだ。

彼らの関係は、べったりとくっついているようで、

永久に交わらないもどかしい関係のようにも見える。

わたしは、中国人密度が最高に達するエレベーターの中で、

中国文化を感じる事が多いように思う。

ある日、エレベーターに乗っていると、

髪を日本のジャニーズっぽくセットして、

太ももから足首まで一直線のラインを保つ

細身のジーンズを穿いた20代前半くらいの男子が

おもむろにタバコに火をつけた。

エレベーターの中での喫煙は中国では、

もう見慣れたものになってしまったが、

やはり気分が悪いので顔をしかめていると、

隣にいた小太りで背の低い40代あたりの男が

「こんなところでタバコを吸うものじゃない。

他の人に迷惑だ」とその男に注意した。

わたしは、中国のマナーもこんなふうに、

人々が注意し合うことで改善されてゆくのかもしれないと、

楽観的な気分になろうとしたところだったが、

そんな間も与えず大きな声で叫び始めたのは、

その若い男のすぐとなりにいた

三輪明弘風の金髪がなぜか、天津丼の餡かけを彷彿とさせる

背の低いおばさんだった。

「息子はタバコを吸っていない。ただタバコに火をつけただけだ、

文句があるならお前が出て行け!」とその中年に

今にも殴りかからんとする様子で叫んでいる。

中年男もそのばばぁのキンキンと耳に痛い声にかぶせるように、

大声をあげはじめた。

そのまわりにいた人たちは、なるべく早くこの喧嘩の主をエレベーターから押し出そうと、

次にドアが開くのを待ちながら階数のボタンを見つめている。

そんな状況で、最も他人顔をしていたのは、

タバコを左手に持った、その若者だった。

全く自分には無関係な事のようにその状況を見ている。

それが、恥ずかしさのあまり

他者に成りすましているとかそういうのではなく

本当に、何も考えていないのだという事が目を見るとわかる。

わたしはその、無気力な目つきに、底知れぬ恐怖を覚えたりする。

教育関係の仕事につくわたしの恋人も、中国の親子関係の奇妙さをよく口にする。

彼がとくに驚くのは、保護者同伴のクラスをする時に、

多くの保護者が、まったく学校側に協力的に動かず、

子どもが、先生に悪態をつこうと、席に着かずに暴れだそうと、

まったく我が子に注意しない事だ。

ある子どもが授業中教室の中を走り回って、

その上、他の子どもに暴力をふるった事があったそうだ。

その授業が終わると、授業を観察していたその子ども親は、

子どものところにすぐさま歩み寄って、とても心配そうに、その子の顔を覗き込み

「お腹はすいていない?」と聞いたそうだ。

わたしは、こういう状況を見聞きするたびに、

中国の親子関係から発する社会問題が、

今後ますます増えてゆくのではないかと、

中国の未来に絶望感を見出してしまう。

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